プロジェクトの背景

「NPO法制度の制定過程の記録保存と編纂」事業が始まったのは2011年3月です。市民団体、政党などによる立法活動が本格化した1995年から16年がたっていました。

1998年3月、議員立法として成立した特定非営利活動促進法(以下、NPO法とする)および2001年3月に制定された認定NPO法人制度について、それまでその立法過程を部分的に、あるいは概要を記録し、分析した文献は多数ありますが、総合的にまとめられたものは研究書などに限られ、立法活動を担った市民団体など当事者である市民が主体となった総合的な立法過程の記録は末だまとめられていませんでした。

 

一方、市民団体および議員・政党などの当時の資料は未整理のものが多く、劣化、散逸するおそれが高まっていました。また、当時の関係者も高齢化しつつあり、時間の経過とともにNPO法の立法活動の記憶、経験などが風化することも否めないという状況から、立法活動の資料および関係者の証言を収集、整理、保存し、その記録をまとめることは、急務の課題でもありました。

また、今日の市民活動の原点ともいえるNPO法制定過程の記録作成を通して、NPO法制度が持つ社会的な意義、市民団体の政策立案・立法活動と議員立法の意義を明らかにすることにより、これからの市民活動の発展を図るうえでも、極めて重要であるとして事業を企画しました。

 

記録の対象期間は、立法を求める市民レベルの動きが現れてきた1990年代初頭から1998年のNPO法制定を経て認定NPO法人制度が成立した2001年3月までとして、詳細な年表、文献・資料等のリストと関係者へのインタビューのまとめで構成しています。

 

第1期(2011年~2014年)

プロジェクトの第1期では、まず法案の実現に大きな役割を果たしたNPO法人シーズと、元参議院議員の堂本暁子氏などが所有していた段ボール箱140箱に及ぶ資料を整理し、様々な分野で立法実現のために尽力された皆さまのインタビューを加えるなどして、NPO制度制定記録の編纂事業を行いました。その成果は以下の通りです。

(1)NPO法人シーズ資料、堂本暁子資料を中心にした、市民セクター、行政セクター、経済セクターなどを網羅した編纂記録 12箱

(2)12箱すべての資料目録

(3)様々なセクターにおける当時のキーパーソンインタビュー 13回

(4)NPO法制定過程の概略、NPO法制度制定年表

 

第2期(2015年~2016年)

この記録は、独立行政法人国立公文書館の寄贈・寄託を受ける基準である「館が現在保存している資料に記録された情報を補完することができる重要な情報が記録されたもの」に該当する可能性が高いことから、第2期では国立公文書館へ上記の資料を寄贈することを目的にした事業を行いました。

国立公文書館が寄贈を受けると、永久に保管される公文書となります。さらに市民社会の記録が公共的位置づけを獲得し、かつ何人も権利として利用請求できる記録となり、「国民共有の知的資源」として民主主義を支える記録として利用されていくことになります。
なお、市民活動の記録の寄贈の受け入れは、本件が初めてのケースとみられます。

 

第3期(2016年~2018年)

プロジェクトの最終段階である第3期では、第1期でまとめた資料を現在の複数の視点で見直し、今後のNPOセクターに生かしていくための連続企画を行いました。

さらに、この記録をこれからの市民社会の基礎資料として活用いただくことを目的として、資料目録、第3期で行った連続企画の記録、プロジェクトの紹介等をHPに掲載しました。

現在は最終の作業として、国立公文書館へ寄贈するため文書の著作権等の確認を行っています。